寒剤利用における注意点
参考文献 応用物理62(1993)PP.174
低温液化ガスの注意すべき性質
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温度が低い
低温ガス自体や装置の低温部分に触れると激しい凍傷を起こす場合がある.
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低温液化ガスの液密度は,大気状態の数百倍である.(気化するとヘリウムで700倍,窒素で650倍になる.)
低温液化ガスを容器や配管中に密閉した状態にすると外部からの熱流入により液が蒸発して圧力の上昇,場合によっては破裂等の事故がおこる.
デューワー瓶の液取り出し口が水分や炭酸ガスの凝結で閉息する場合もある.
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低温液化ガスの沸点付近の蒸気は滞留しやすい.酸素,空気以外のガスは窒息性ガスである.
換気の悪い場所での窒息事故が発生するおそれがある.空気中の酸素濃度が16パーセント以下になると人体への影響が現れる.
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液体酸素は支燃性ガスである.
液体窒素をいれた容器を放置すると,空気中の酸素が凝縮して酸素濃度の高い液体になる.(液に青みがかかってくる)これに可燃性物質等を近づけると爆発の可能性がでてくる.
寒剤の安全な取り扱い
寒剤(低温液化ガス)を安全に取り扱う上での留意点
- 低温液化ガスは容器や配管に入れ密閉状態にしてはならない.
- 安全弁,圧力計は定期的に検査し,作動を確認する.
- デュワー瓶などの低温液化ガス容器の駅取り出し口やベントは,
空気中の水分や炭酸ガスが侵入し凍結しないようにする.
- 装置や容器の初期予冷は,低温液化ガスの蒸発を制御しながらゆ
っくり行う.(このとき,蒸発ガスの換気にも注意)
- 低温液化ガス容器内の水分は,使用する前に取り除く.
- 炭素鋼は-40℃以下で使用してはならない.(圧力下での使用温
度範囲はJISや高圧ガス取締法を参照)プラスチック材料も応力
のかかるような使用は避ける.
- 液体窒素を開放容器に入れ長時間放置しない.液体空気も同様.
- 低温液化ガスのガス放出は通風のよい室外に行う.ガスのたまり
やすいピット内には放出させない.
- 低温液化ガスを取り扱うときは,凍傷を防止するための革手袋を
着用する.
- 液体窒素などの不活性ガスを使用する室内では,酸欠防止のため
換気を十分行う.酸素濃度が18%(警報点)以下にならないよう
酸素モニターを設置し監視することが望ましい.